音楽はクルマかごはんか

hisashi toshima 戸嶋 久
4 min readJun 11, 2020

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昨日、ルームフル・オヴ・ブルーズのことを書いてリンクした萩原健太さんのブログ記事。マクラでおもしろいことが書いてありますよね。いわく「音楽はクルマかごはんか」論争(笑)。

健太さんと近田春夫さんがやりとりすると、ポップ音楽は新しくあるべきかどうかという話になるそうで、そりゃあ近田さんはああいったひとですから〜、音楽は常に新しくあらねばならない、つまりクルマみたいなもんで、最新型に乗っていないとダメなんだと。いっぽう健太さんからすれば、音楽はクルマっていうより毎日のごはんだから、いつも白飯と味噌汁でそれで飽きないし、むかしながらのいつも変わらぬ美味しい味があることが大切っていう発想になるそうです。

近田春夫さんの生みだす音楽はぼくも好きで聴いていますけど、音楽は常に新しくなければならないか否かといった話になるならば、そりゃあもう完璧に健太さんに共感するわけですよ。だからといって近田さんに対してどうこうっていうことにはなりませんけどね、彼の音楽は楽しいんだからそれはそれで楽しめばいいんで、音楽進化論にはくみしないよというだけの話です。

それで今日たまたまブルーズ(・ロック・)・ギターリストのジョー・ボナマッサを聴いていたんですけど、こういった音楽って本当に100%時代遅れですよね。いまの時代、21世紀に、こんな『ブルーズ・デラックス』(2003)のようなアルバムって、時代へのレレヴァンスみたいなことはゼロなわけです。だから、音楽はクルマであって最新型のに乗ってなくちゃいけないっていう考えのみなさんからすれば、どこにもとりえのない音楽に聴こえるかもしれません。

でもぼくなんかにとっては聴いて最高に気分いい、楽しめる音楽であることも事実なんで、こんな古くさいブルーズ・ミュージックを聴いて楽しい時間を過ごせる、ハッピーな気分になれるっていうのが、まさにグッド・オールド・ブルーズという音楽が持っている毎食のごはんのような変わらぬ魅力、不変・普遍の味わいということになるんだと思うんですね。

ブルーズやブルーズ・ロックだけでなく、オールド・ファッションドな、つまりハード・バップみたいなスタイルのジャズもそうだと思うんですけど、こういった音楽にはいまの新しい時代になってもひとびとを惹きつけるチャームがあるとぼくだったら思うんですね。クルマや電化製品だったら型落ちになればおもしろくなくなるかもなんですけど、音楽はごはんですから毎日同じものを食べていても美味しければ OK ですよね。

健太さんはご自分のブログだけでなく、朝日新聞デジタルなんかでも、折に触れて「音楽は新しくなくちゃならない」「進化しなくちゃ」「新しい音楽こそがすばらしい」みたいな、一部のかたがたが持つ発想に異を唱える文章をずっと書いていて、いつもぼくは頼もしく読んでいるんですね。長年周囲の音楽好きや音楽評論家に対し抱いていた強い違和感をことばにしてくれていると、うれしく思っています。

健太さんとは音楽について考えが違っている点も多々ありますが、音楽進化論はフィーリングに合わないと思っているという意味においてはぼくもピッタリおんなじなんです。そう、ぼくにとっても音楽はクルマとか電化製品みたいなものじゃなくて、毎度の食事みたいなもんですから、毎日ずっと白飯と味噌汁で変わらぬ美味だと思うように、ブルーズや(古くさい)ジャズを今後も死ぬまで聴き続け、愛し続けていこうと思います。

(written 2020.4.21)

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Written by hisashi toshima 戸嶋 久

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