歴史を感じながらコーヒーを飲む
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Twitterでフォローしているカフェバグダッドさんが、以前トルコ・コーヒーのことをnoteに書いていたことがあります。
→「トルコ・コーヒーはなぜ素晴らしいか1」
そうです、愛好家でも、コーヒーを淹れて飲むときに、そもそもコーヒーの歴史を感じながらやりたいというひとはあまりいませんよね。
人類のコーヒー愛飲史をたどると、初期は炒った豆を粉砕してお湯を注ぐか水から投入して沸かすかして、それを濾したりせず、そのままうわずみ液をすすっていたんでしょう。文献資料にあたるとそういう記述が出てきます。
トルコ・コーヒーは、こうしたコーヒー・メイクの歴史を実感しながら飲めるというのがいいんです。とはいえ、こちら愛媛県ではトルコ・コーヒーを出してくれるお店もないし、自宅でやるには専用マシンを買わないといけないしで、どのみちちょいハードル高め。
だから、かなりなブラック・コーヒー愛好家として40年以上生きてきたぼくも、ずっと紙製のフィルターで淹れるという最も一般的に普及している方法をとってきたわけです。うまくやればとってもおいしいし、プロのやるカフェやレストランでもペーパー・ドリップで淹れて出すところは多いです。
ところが、ちょっと思うところがあったのと推薦してくれるかたがいたのとで、四年くらい前、2018年ごろだったかな、フレンチ・プレスでコーヒーを淹れるというのをはじめてみたんですよね。
フレンチ・プレス(or たんに「プレス」)とは、専用の器具に挽いた豆を入れ、熱湯を注ぎフタをして、そのまま四分待ったら、フタに付属するプランジャーを押し下げ金属製メッシュで豆を沈めて、上のコーヒー液をカップに注ぐというもの。
紙でも布でもフィルターで濾すと豆かすが液のなかに混じりこまず、透明で飲みやすいすっきりしたコーヒー液ができあがりますよね。もちろんそれでいいんですけど、コーヒー本来のうまみ成分までフィルターがシャットアウトしてしまうところはちょっとした問題です。
コーヒー・オイルもふくめコーヒーのうまみ成分を残さずフルに味わおうと思ったら、初期のように歴史的な淹れかたをするか、現代でも(コーヒー飲用の起源地たる)中東地域では一般的なトルコ・コーヒーみたいにやるか、どっちかしかありません。
フレンチ・プレスは、こうしたコーヒーの味わいをフルに楽しみたい&歴史を実感したいという面と、淹れやすく飲みやすいという実用面の双方をまずまず折衷できる、そこそこいい妥協点なんです。フィルター・ドリップ方式ではほぼ味わえないコーヒー・オイルもちゃんと出ます。
フレンチ・プレスの金属製メッシュはペーパー・フィルターなどとは仕組みが根本的に異なるものですから、ミルで豆を挽く際に極粗挽きにしてみてもどうしても出てしまう微粉がコーヒー液のなかに混じり込み、注いだカップの底に沈殿します。
ですので、カップの底の最後の一滴まで飲みきることはできず、その直前でストップするしかありません。あとくちがちょっとあれなんですけども、コーヒーのうまみ成分であるオイルが余さず液のなかに出てきますので、濃厚でフル・ボディな味わいになって、もうホントそれがずいぶんとおいしくて、コーヒー・タイムが楽しいんです。
コーヒーの極細微粉と油分がいっしょくたで液に混じり込むわけですから、もちろんプレス器具のケース内部も金属製メッシュも注いだカップの内壁面も、どろどろによごれます。洗剤を使っての洗浄もめんどくさい。
でも「ある程度」コーヒーの歴史を感じつつ真のうまみを味わうように飲みたいと思えば、日本の一般家庭人にはこれがほぼ唯一に近い選択肢。よごれるので洗浄が…っていうのはトルコ・コーヒーでもそうだし、初期の歴史的淹れかたでも同じだったはず。
ぼくだっていつもフレンチ・プレスで淹れているわけではなく、そのつど気分でフィルター・ドリップ方式と使い分けていますし、アイス・コーヒーをつくるときはドリップ方式じゃないとおいしいのができないですね。毎日一度はフレンチ・プレスで淹れたフル・ボディの濃厚なホット・コーヒーを飲んで、楽しいひとときを音楽とともに味わっています。
(written 2021.12.23)