『俗楽礼賛』を音で聞く
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っていうSpotifyプレイリストがあるんですけど(上掲リンク)、これ、なんでフォロワーがぼくを入れて三人しかいないわけ〜??中村とうようファンは多いはずなのに、そんなみなさんはSpotifyやっていないんでしょうか。もったいない。
この「『俗楽礼賛』を音で聞く」プレイリストを作成されたのは、Twitterでおつきあいのあるcintaraさん。とうようさんの名著『俗楽礼讃』(1995)に登場する歌手たちを、実際の音源でたどれるようにしたものですね。ぜんぶがぜんぶSpotifyにあるわけじゃないんで、だから可能な範囲で、ということでしょう。
といいましてもぼく個人はあの『俗楽礼賛』がもう手許にないんで、だからあの本とこのSpotifyプレイリストを比較して突き合わせながら聴くっていうことはできないんですけど、『俗楽礼賛』の内容はちょっとだけなら憶えているので、あるいはあの本をご存知ないかたがただって、じゅうぶん楽しめるプレイリストだと思いますよ。
プレイリスト「『俗楽礼賛』を音で聞く」は、とうようファンのあいだで、そうでなくとも日本でもむかしから大人気のパティ・ペイジではじまりますが、その後もあの本を愛読していたファンならもちろん知っている名前ばかり並んでいます…、のはずなのですが、個人的には忘れていた歌手もいました。
『俗楽礼賛』を、というか多くの本を、愛媛に戻ってくる2011年に手放したのでしかたがないかなとは思いますが、たとえばLos Torovadores de Cuyo、Jaime Guardia、La Niña de los Peinesあたりはわかりませんでした。そういうのはこの三組だけなんですけど、『俗楽礼賛』に登場していたということなんですよねえ、う〜ん。
でもそれら以外はおなじみの歌手たちばかり並んでいて、あの本やとうようさんを愛読していたファンのみなさんなら思わずニンマリするはず。上でもちょろっと言いましたが、とうようさんの愛読者じゃなかった、中村とうようなんて知らないよというリスナー向けにも、幅広い音楽ジャンルを包摂したプレイリストとしてなかなか楽しくできあがっているなと感じます。とうようさんをご存知ないかたが『俗楽礼賛』名のプレイリストに興味を示すかどうかはともかく。
個人的にはトルコの二名(ヌレッティンとゼキ・ミュレン)あたりからはじまるパートがほんとうに好きで、アスマハーンを経てヌスラット、エルフィ・スカエシなんかで、聴きながら微笑んでしまいます。最終盤の日本の歌手パートもすごくいい。川田義雄とミルク・ブラザースってマジ楽しいな〜。そこから小畑実を経て美空ひばりで締めくくる流れも抜群の構成。
一人一人、一曲一曲、Spotify内を検索して拾っていって並べたのに違いありませんから、なかなか骨の折れた作業だったろうとねぎらいのことばをcintaraさんにかけたい気分です。歌手や曲の並びも考え抜かれているし、聴いて楽しい構成になっていますよね。必ずしも『俗楽礼賛』での登場順じゃないあたり、実際の音で聴くとどうなるか、よくご存知のひとが編んだものだということがわかります。
『俗楽礼賛』という本は、活版印刷、糸かがり、布製表紙など、あの時代でも消滅しつつあった製本技術を駆使してつくられ出版された渾身の一冊だったので、絶版となっているいまや、復活の可能性もありません。でもこうやって実際の音楽として聴けるようにしてくださるかたのおかげで思い出し、忘れずにいることができますね。
(written 2020.9.24)