プリンスがギターの天才だったのはこれでよくわかる
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1960年代から「ギターの神様」と賞賛されてきたエリック・クラプトンは、あるとき「”ギターの神様” と呼ばれるのはどんな気分?」と聞かれ、「その質問はプリンスにしてほしい」と答えたんだそう。
つまり、正真正銘、だれもが認める本当のギター神はプリンスだったということです。その腕前は自身のいろんなアルバムでも証明されているところですが、ここにそれをとても強く印象づける一個の動画があります。ロックの殿堂公式アカウントが2012年に公開したもの。
2004年「ロックの殿堂」式典で披露されたビートルズ(ジョージ・ハリスン)の「ワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」のパフォーマンス。ダニー・ハリスン、トム・ペティ、ジェフ・リン、スティーヴ・ウィンウッドらが共演しているもので、そこにプリンスも参加しています。
今2021年4月24日、この映像の新たな編集版が公開されて話題になっていますよね。ニュー・ディレクターズ・カットと名付けられたそれはプリンスに焦点を当てたもので、このパフォーマンスでの彼のギター・ソロがどれだけすばらしいものなのかを強調しています。
2004年の「ロックの殿堂」式典のオリジナル放送を監督およびプロデュースしたジョエル・ギャレンによる再編集ヴァージョンで、式典パフォーマンスから17年が経過して、この「ワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」におけるギター・ソロの際のプリンスのクローズ・アップをいくつか追加していますよね。
現実問題、サウンドがリマスターされたわけじゃないし未発の新映像が発掘されたのでもなく、だからこのパフォーマンスにおけるプリンスのギター・ソロのみごとさが2012年版と21年版で違うとか、新しいほうがよりよくわかるようになったとか印象強くなったとか、そういったようなことはないかなあというのが個人的な感想です。
この「ワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」、歌はAメロをトム・ペティが、サビをジェフ・リンが歌っていますが、それが終わった約三分半すぎからギターでプリンスが登場。演奏終了まで数分間にわたり、これでもかとそのヴァーチュオーゾぶりをこれでもか見せつけるかのように弾きまくっています。
後半部は完璧にプリンスの独壇場。しかしこれ、まったく呼吸するようにギターを弾きっぱなしにしないでほしいよと思うほど。スペースへの斬り込みかたもシャープで際立っているし、ぺらぺら自由自在に思うがまましゃべりまくる人間みたいに、思うがまま弾いています。こんだけなんでもないように自然に凄腕を披露できるギターリストが、いくら一流のプロでも、はたしてどれだけいたでしょうか。
あらゆるポピュラー・ギター・ミュージック界でぶっちぎりのトップだったことを図らずも証明してしまったプリンスのこのソロ。ギターでプリンスにできなかったことなどなにもなかったと痛感する超絶パフォーマンスですねえ。この「ワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」でのソロに匹敵する内容は、いかなプリンスでもほかにあまり例がないのでは?
まさにギターの神かなにかが降臨しプリンスに憑依したのだろうかと思わせるほどのソロ・パフォーマンス。ファンなら、いや、すべてのロック・ギター・ファンにとって、必聴の №1であることは間違いありません。
(written 2021.5.1)