ネオ・ソウルを通過したからこそのアフロビーツ 〜 ツェディ
bunboni さんに教わりました。
ケニア生まれエチオピア育ちでいまはアメリカに住むというアフリカン・ディアスポラの歌手ツェディ(Tsedi)。その2019年作『Sew』は、聴いていてとにかく心地いいっていうのが最大の特長ですね。洗練されていて都会的なサウンドとヴォーカル。エチオピアの歌手では以前もチェリナのことを書きましたが、こういったソフィスティケイティッドな音楽がどんどん出てきているのかもしれないですね。そういうタイプが好みであるぼくは大歓迎です。
チェリナにマジぞっこんなんで、いまだにですね、だから(ディアスポラであるとはいえ)同じエチオピア歌手ということで比較しちゃうんですけれども、そうするとぼくにはチェリナのほうがグンと心地よく響きます。アメリカ在住なのにツェディのほうが若干垢抜けていないような…。ぼくの勘違いですかね。ちょっとアフリカン・ローカル色がチェリナよりも濃いめに出ているような気もするんですね。
レゲエが基調になっているという点は二人に共通するところですね。ただツェディのほうはチェリナほど明確なレゲエ・ビートを刻んでいるわけじゃありません。もっとアフリカナイズされたというか、これがいわゆるアフロビーツの特色にもなるんですよね、きっと。世間でアフロビーツに分類されている音楽を聴くと、ぼくは抽象化されたレゲエ・ビートを感じるんです。ツェディのばあいもそう。
リズム・トラックなんかはプログラミングでつくってあるかもしれませんが、それ以外は基本人力演奏者がいるんじゃないですかね、ツェディのばあいも。鍵盤やエレキ・ギターのやわらかいサウンドが心地よく響き、その上に主役のふわりとした声がそっと乗る、決して張ったりはせず、スーッとナチュラルに歌う、といった点はチェリナと同じで、ネオ・ソウル通過後の新世代ならではといった音楽性でしょう。
その意味でもツェディのこのアルバムでいちばんのお気に入りは10曲目の「Halo」。アクースティック・ピアノ一台だけというに近い伴奏で歌われるのがいいですね。要するにこういった生でも電気でもピアノやエレキ・ギターやなんかの raw でオーガニックなサウンドがぼくは大好きなのかもしれません。それに乗せてやわらかくナチュラル&スムースにヴォーカリストが歌うっていう、そういった音楽が癒しになるんです。サウンド的には直截なネオ・ソウルの影響があまりなく、アフロビーツ寄りですけれども、ツェディのこういった手法や感性はあきらかにネオ・ソウル由来ですね。
(written 2020.2.16)