コロナまだまだ?シリーズ(5)〜 岩佐美咲 5th コンサート DVD(これでおしまい)

hisashi toshima 戸嶋 久
5 min readMay 17, 2020

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2019年1月26日、東京キネマ倶楽部で行われた岩佐美咲のフィフス・ソロ・コンサート。それを収録した DVD『岩佐美咲コンサート2019〜世代を超えて受け継がれる音楽の力』を昨年発売時に観た際の感想文はこれです↓

このフィフス DVD に収録されているうち CD に未収録なのはたったの二曲しかありません。

・能登半島(石川さゆり)
・狙いうち(山本リンダ)

なんやたったこれだけか、これでは今日の文章が仕上がらないな〜と思ってしまいますが、コンサート当日には初披露だった曲がけっこうあったのです。相前後して、あるいはしばらくして、また一年後に、スタジオで歌いなおし CD 収録され発売されたケースが多いんですよね。この五回目のコンサートのクライマックスだったともいえる名曲名歌唱「遣らずの雨」(川中美幸)もそうです。

前2018年は濃厚演歌路線だったのが、2019年はややライト・タッチの歌謡曲傾向に移行したということで、コンサートもそれを反映しています。毎年のことなんですが、美咲のソロ・コンサートはその年の新曲の傾向にあわせて編成されていますから。濃厚激烈演歌ならコンサートもそんなカヴァー曲を多めに、軽歌謡路線だったならポップスを多めにとかですね。

フィフス DVD のばあい、前年の「佐渡の鬼太鼓」路線から当年の「恋の終わり三軒茶屋」へと移行させるため、四曲目の「遣らずの雨」までは濃厚抒情演歌をまとめて並べ、その後5曲目の「冬のリヴィエラ」以後は軽めの歌謡曲で構成するという、そういった具合になっているんですよね。だから「遣らずの雨」と「冬のリヴィエラ」はこのコンサートのヘソです。

「能登半島」もコンサート序盤の濃厚演歌路線、有り体に言えば前年の「佐渡の鬼太鼓」の傾向にあわせるためにチョイスされたものでしょう。ところでこの「能登半島」という曲はちょっとおもしろいですよね。A メロの出だしが、ふつうの曲ならサビになりそうな動きの旋律になっていて、はじめて聴いたらめんくらうような感じです。全体的にも斬新なメロディ展開で、書いたのは三木たかしですか。初演歌手の石川さゆりにとってもチャレンジだったのでは。

美咲はいろんなメロディや凝った展開もあるポップスの世界にもなじんでいますから、「能登半島」のそんな新鮮なメロディも難なく歌いこなしていますね。さらにこの曲でもほかの曲でもそうなんですが、フレーズ終わりやコーラス終わりにスーッと音を伸ばす部分の声の丸み、ふくらみが2018年までと比較しても豊穣になっているのがわかります。

声を伸ばすときに丸みやふくらみが出て豊穣に、というのは実はヴィブラートが効くようになったということでもあります。もともと美咲はナチュラル&ストレートな発声法でやる歌手で、コブシもガナリもヴィブラートもなし、というのが大きな特徴だったんですけど、2019年はじめごろから軽いヴィブラートで声をサスティーン(サステイン)させるようになっているんですね。

しかし歌謡曲やポップスを歌うときにはそういったヴィブラートは抑えられていますから、なにを歌うかによって発声を自在に変化させられるようになったということでしょう。表現の幅が広がったと素直に歓迎したいと思います。それでも歌謡路線1曲目の「冬のリヴィエラ」ではまだ濃厚さを残していますが、「恋の奴隷」以後は軽快さのほうが勝るような声の出しかたになっています。

コンサートそのものの開催時には、このあたりの曲は初チャレンジ、初披露セクションになっていたもので、その後「恋の奴隷」「お久しぶりね」「あなた」「別れの予感」は2019年2月発売のシングル「恋の終わり三軒茶屋」に収録・発売され、「遣らずの雨」「冬のリヴィエラ」は、同年夏発売の同曲シングル特別盤に収録されました。ですので、このコンサート当日の印象としては<新鮮>ということがあったんですが、いまとなっては見知った曲ばかりということになるんです。

ラウンド・コーナーでの「狙いうち」。きのう、ピンク・レディーの曲と美咲はとても相性いいんじゃないか、だからなにか一曲でも CD 収録してくれないだろうかという意味のことを書きました。実は山本リンダのこのへんのアクション歌謡路線も美咲によく似合うピッタリの楽曲傾向だなとぼくはにらんでいます。だから「どうにもとまらない」でもいいし「狙いうち」でもいいけど、それもスタジオ収録してくれないもんでしょうかねえ。

正直な話、山本リンダとかピンク・レディーとかの、ああいった歌い踊る歌謡曲が美咲に似合っているというのは、美咲はAKB48というダンス&ヴォーカル・グループにいたからでありますね。七年間毎日ステージで歌い踊っていたわけですから、はっきり言って鍛えられています。モノが違うんです。美咲のソロ・コンサートで「ペッパー警部」や「狙いうち」をやる様子は、まさにこれが私の本領ですよと言っているようなハマり具合じゃないでしょうか。

(written 2020.5.15)

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Written by hisashi toshima 戸嶋 久

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