どこまでも伝統的なブルーズ 〜 キム・ウィルスン
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Kim Wilson / Take Me Back!: The Bigtone Sessions
萩原健太さんのブログで知りました。
ファビュラス・サンダーバーズのヴォーカル、キム・ウィルスンのソロ・アルバム新作『テイク・ミー・バック:ザ・ビッグトーン・セッションズ』(2020)。もちろんトラディショナル・ブルーズですよね。
この手の音楽ですから、アルバム収録曲はスタジオにバンド・メンバーを集めての一発録りだったみたいで、しかもモノラル録音だそうです。「だそう」っていうのは、いまぼくはスピーカー一個で音楽聴いていますから、わからないんですね。そう、パソコンとBluetoothで接続したスマート・スピーカー一個だけ。
昨年7月20日に引っ越してきて以来、それ以前に使っていたオーディオ機器はもちろん持ってきたんですけど、実家ゆえ住宅事情からそれを設置できないんですね。だから、Boseのスマート・スピーカー一個だけでそれ以来ずっと音楽を聴いています。ちょっとあれですけど、しょうがないんですよねえ。だからモノラルもステレオもわかりません。
そんなことはいいとして、キム・ウィルスンの『テイク・ミー・バック』。キムはヴォーカルだけじゃなくブルーズ・ハープもやるんで、しかもそれはがっちがちに歪んだ電化アンプリフェイド・ハープ。このアルバムでもそれが随所で聴こえますよね。ある意味、ハープのほうが主役なんじゃないかと思えるほどの内容かもしれません。
実際、インストルメンタル・ナンバーも四曲あるし、アルバム・タイトルにもなっている12曲目「テイク・ミー・バック」がリトル・ウォルターの曲だということもあって、キムはリトル・ウォルター直系のブルーズ・シンガー&ハーピストなのかもしれません。このアルバムでも快調なハープ・スタイルなんかは間違いないですよね。
もっとも、アルバムにあるカヴァー曲九つのうち最も多いのはジミー・ロジャーズ・ナンバーの四曲で、そのほかハウリン・ウルフ、ジミー・ノーレン、ラリー・ウィリアムズ、パーシー・メイフィールドが一個づつに、上記のとおりリトル・ウォルターが一個。
往年の、そう、つまり1950年代のシカゴ・ブルーズの匂いがアルバム全編で強く漂っていて、こういった音楽、もはや時代遅れだよと笑う向きもおありかもしれませんが、伝統を受け継ぐこと、守り抜くこと、それだって新しい領域を切り拓くのと同じくらいカッコよくて意味のあることなんですよ。
ブルーズってそんなもんだよねえって、そんなことをきょうもまた強く実感したキム・ウィルスンの新作なのでありました。目新しさ、音楽の進化、更新なんてこれっぽっちもここにはありませんけどね。
(written 2020.11.22 )