Spotifyに過去の名作のオリジナル・アルバムがないのは問題だ
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こないだマーヴィン・ゲイの『ワッツ・ゴーイング・オン』を聴きかえしたくなってSpotifyで検索したんですよ。すると三種類出てきたんですけど、1971年のオリジナル・レコードどおりのものが一個もないんです。三つとも拡大版で、それしかないっていう。
こういうのってどうなんでしょうね。マーヴィンの『ワッツ・ゴーイング・オン』だけじゃなくてマイルズ・デイヴィスの『カインド・オヴ・ブルー』『ビッチズ・ブルー』なんかもそうで、ほかにも枚挙にいとまがないんですけど、デラックス・エディションみたいなのしかなかったり、おしりにちょこっとボーナス・トラックがくっついていたりとか、ホ〜ントそんなのばっか。
もちろんオリジナル・アルバムどおりのものだって多いんですけど、過去の名作の、そう、ぼくの世代はそれがどんなかたちだったのか、曲数や曲目を承知していますから、Spotifyにある付加版でもどこまでがオリジナル分かわかります。でも、これから音楽の世界に分け入ろうとする若い世代にとってはどうなんでしょうか、ちょっと迷ったり、これはこういうもんなんだと受け止め疑わなかったりするのかも。わかりませんけど。
もちろん過去の名作についてはネット上にたくさんの情報があって、オリジナル・アルバムがどんなだったか、ちょこっと検索すればすぐわかります。ぼくも知らない過去作が多いので、やっぱりネットで調べてみるケースはしばしば。ネット検索を厭わない人間であればそれでOKなんですけど、みんなイチイチ調べたりしないかもしれませんよね。SpotifyだったらSpotifyにあるものをそのまま受け入れているかも、って思うんですね。
理想型としては、デラックス・エディションみたいな拡大版や、ちょこっとボーナス・トラックがくっついたものの横に、オリジナル・アルバムどおりのものも並べておいてほしい、それがもとのかたちですよとわかるように表示してほしい、という気持ちがSpotifyに対してあります。じゃないと、いちいちネットで調べないひとも多いと思いますからね。
それに検索してここまでがオリジナル・アルバム分だとわかっても、そこで再生をストップするのもちょっとむずかしいっていうか、停止ボタンを押すのがややメンドくさいんですよね、ストリーミングで聴いているひとならわかると思いますけど。しっかり聴きたいばあいのぼくだってそうなんだから、ただなんとなく流しているだけのケースやリスナーだったら再生が終了するまでそのまま聴くと思いますね。
オリジナル・アルバムは、全体の構成や流れ、どうはじまってどう終わるかみたいなことまでしっかり考え抜かれて曲が並べられているので、拡大版やボーナス・トラック追加でそれが崩れちゃうのはちょっとイカンなあという思いがぼくは前から強いんですよね。トータル・アルバム志向ってことですけど、最初からアルバム体裁でこの世に発表された音楽作品は、それを尊重すべきじゃないですか。いくら曲単位で聴くストリーミング全盛時代とはいえ。
近年のCDリイシューなんかでも、きょうここまで書いたことと同様のことが言えます。こういった大切なことを平気で崩しておいて知らん顔しているレコード会社や配信サービスには強い疑問を感じざるをえません。最近音楽に興味を持ちはじめてオリジナル・アルバムの体裁を知らない若いファンが戸惑ったり、なんの疑問も抱かずに配信サービスにあるそれを聴いているんじゃないかと思うとですねえ。老婆心でしょうか。
(written 2020.10.26)
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※(2021年2月4日追記)
今年、マーヴィンの『ワッツ・ゴーイング・オン』の50周年記念版がリリースされ、Spotifyに出るものも入れ替わったようで、その際にオリジナル・アルバムそのままのかたちのアルバムも入りました。