Soggy Cheerios との出逢い 〜『III』

hisashi toshima 戸嶋 久
5 min readFeb 12, 2020

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https://open.spotify.com/album/4Iz8QbHoeiQgPmvG3SY2c7?si=MO6jVjzpTEOMVfbjtT-k2A

萩原健太さんのブログで知りました。
https://kenta45rpm.com/2020/01/14/iii-soggy-cheerios/

鈴木惣一朗(ワールド・スタンダード)と直枝政広(カーネーション)によるポップ・ユニット Soggy Cheerios の文字どおり三作目になる『III』が昨2019年暮れにリリースされています。もうかなりのヘヴィ・ローテイション盤になっているので、ここらでやっぱりちょっと記しておきましょうね。これ、いままでのこのユニットのアルバム中たぶん最高傑作じゃないかと思いますし。

ソギー・チェリオスでいちばんいいのはソング・ライティングにありというのがぼくの見方で、曲を書き、アレンジし、サウンド・メイクする、どんな音をどこにどう配するかという、トータルな意味での曲づくりがとってもすばらしいなと思います。最新作『III』では、それまでと違って作詞作曲者名クレジットがユニット名じゃなく、鈴木か直江のそれぞれ個人名になっていますが、いままではどうしていたんでしょうかねえ。

さらにソギー・チェリオスは本当に二人だけのユニットで、演奏も基本二名がさまざまな楽器を多重録音し声も重ねるというやりかたで音楽をつくっていますが(若干のゲスト参加はあり)、できあがったアルバムを聴いて判断すると、演唱面までふくめた意味でのプロデュース全体がやはり秀逸だな冴えているなと思うんです。プロデューサーもソギー・チェリオスになっています。

このユニットの音楽の色彩感をある意味特徴づけているのは鈴木の弾くマンドリンじゃないかと思うんですけど、そのほか若干のエレキ・ギターやエレピなど聴こえはするものの、基本アクースティックなサウンド・メイクが中心になっているのも個人的嗜好に合致しています。ナチュラルな木の香りがしてくるようなサウンドというか音楽ですよね、ソギー・チェリオスって。

鈴木の弾くマンドリンの高音のキラキラした音色が控えめに輝く瞬間とか、両名の弾くアクースティック・ギターのやわらかい音色など、スムース&ナチュラル。本当に心地よくって、しかもポップ。さらに日本の音楽家じゃないとこの表現はできないなと確信できるサウンド面での個性もあります。もともとはビートルズや、あるいはアメリカン・ポップス(ロック)がルーツになっているユニットじゃないかとは思うんですが。

ここの歌ここの演奏が特にすばらしいと傑出したものがあるわけじゃなく、プロデュースや(トータルな意味での)ソング・ライティングがみごとであるというのは『III』についても言えること。まず1曲目の「繭」。これなんか最高じゃないですか。やはり鈴木のマンドリンが効いていますが、この曲ではギター&ヴォーカルだけのパートとリズム隊が入ってくるパートとのコントラストが本当にすばらしく、グッと心をつかまれます。

特に傑出した歌もあるわけじゃないと書きましたが、2曲目の「海鳴り」は例外です。ここではシンガー・ソングライターの優河が歌っているのがもうなんともいえず最高で、なんなんですかこの声は?まるで神の声のようじゃないですか。優河のことは、このソギー・チェリオスではじめて知ったんですけど、もうビックリしちゃいました。こんなに透き通った、しかもミスティックな声ってこの世に存在するんですね。優河のこともちゃんとチェックしなくちゃね。

そのほかアルバム前半ではやはりアクースティック・ギターを中心とし、マンドリン・サウンドを効果的に置きながらの弦楽器アンサンブルで組み立てられていますが、あいだにインストルメンタルな6「まだら」をはさんでの後半部では、個人的に8「HAPPY」が沁みました。健太さんもおっしゃっているように歌詞がグッとくるという面はたしかにありますが、それ以上にこのポップでさわやかな曲調がぼくは大好きですね。

アルバムのラストにはボーナス・トラックとしてライヴ収録の「あたらしいともだち」(名曲!)が置かれています。2019年5月26日の渋谷ライヴで、かもめ児童合唱団がフィーチャーされています。この曲は前作『EELS AND PEANUTS』(2015)の1曲目だったもので、『III』ラストのこのライヴ・テイクでは演奏がソギー・チェリオスの二名だけ。チャイルド・クワイアによってこの曲の持つあたたかみのある美しいメロディ・ラインと歌詞のよさ、人間味がいっそうきわだっています。

ソギー・チェリオスはこの新作『III』リリースにともなう全国ライヴ・ツアーを2月15日の神戸から実施します。ぼくは最終日3月24日渋谷公演のチケットを買いました。バンド形式でやるのがこの日だけということで、東京まで行くのはたいへんなんですけど、おおいなる楽しみです。

(written 2020.2.3)

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Written by hisashi toshima 戸嶋 久

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