音楽くらい好きなように聴かせてくれ

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ちょっと前、四月ごろかな、自宅で映画作品を(Netflixなどの配信で)見る際、早送りで再生する、そういった方法でしか見ない、といったひとたちの存在がちょっと話題になりました(そのニュース・ソースのURLも書いてあったんですけど、いま見たら消えています)。

Twitter上でも、けしからん、作品に対する冒涜である、などの声が噴出していて、ネガティヴな意見が主流だったわけですが、しかし自宅において自分の趣味で見るときくらいは好きなように見ればいいんじゃないのかというのがぼくの率直な感想です。

他人から(特にその筋のクロウトさんたちから)ああしろ、こうしろ、こういうふうじゃないとダメだ、などと指図されるいわれはないよなあ、と思うんですよね。それは映画だけじゃなく音楽愛好の趣味世界でもそうです。

音楽はさすがに倍速で聴くとかできませんけれども(サブスクのアプリにその機能がない、CDプレイヤーは早送り再生できるけど)、ぼくなんかもときどき曲をスキップすることがあります。CDプレイヤーにディスク入れて聴くときはあちこち飛びにくくても、サブスクならパソコンやスマホのアプリでポチっとするだけですからね。

こうしたことをもってして、音楽も堪能するものじゃなく消費するものになった、サブスクはそんな動きを加速させるとして、否定的な言辞を述べるかたがTwitter上なんかにもかなりいます。ケッ、ほっといてくれよとぼくなんかは思いますね。音楽をどう聴こうが自由じゃないか、どうしてクロウト気取りの人間にあれこれ言われなくちゃならんのだと、ヘドが出ます。

パソコンやスマホのアプリで聴くサブスクの普及後、音楽に対する接しかたはあきらかに変わったなと思います。というのは周囲をみて情報を得て言っているだけで、ぼく自身はたんに金欠病でCD買えなくなったからサブスクを代替手段にしているだけで、特になにも変わっていませんけれども、世間的には、特に若い世代で、聴きかたが変化したというのは間違いないはず。

しかし趣味ですからね。それを仕事にしているのならある程度の「規範」みたいなものが求められるのかもしれませんが、自分の楽しみで聴くだけなんだからどうやろうとそのひとの自由じゃないか、勝手にやればいい、他人が口出しするようなことじゃないはずだと、そう信じて疑っていません。

音楽文化の破壊・崩壊だ、とまで言うかたがたもなかにはいて、本当ですかねえ?といぶかしく思います。接しかたが変わっても、音楽がすたれてきているわけでもなくて、むしろサブスク普及後、業界の総売上高は上がっています。う〜ん、あれですね、レコードからCDへとメディアが移行した時代にも「CDなんかで音楽を聴くなんて冒涜だ、文化の破壊だ」と声高に叫ぶかたがたがかなりの数いらっしゃいました。

いま、またふたたび、今度はそれが物体で聴くのからサブスクで聴くという方法に移行しているだけの話であって、もちろんCDを(レコードを)買って聴くという習慣をそのまま維持しているひとはそれでいいと思いますよ。そのことにサブスク派が文句をつけることはありません。

だからフィジカル派もサブスク派の聴きかたに「そんなのケシカラン」「なんかちょっと…」みたいな言いかたをしないでほしいんですよね。自分に関係ないんなら黙っていればいいじゃないかと思います。

テレビのリモコンでチャンネルをどんどんザッピングするように、サブスク・アプリでどんどん曲をスキップしてあっちこっちと飛ぶ、これを聴いていたかと思うとつまらなければすぐ別のものをクリック(タップ)する、アルバムを通して聴かず途中でやめる、曲単位で再生する、などなどサブスクでの聴きかたは、それじたいが音楽文化の破壊だとか冒涜だとかいった話じゃないはずです。

どうか、ほっといてくれ。

(written 2021.4.5)

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hisashi toshima 戸嶋 久
hisashi toshima 戸嶋 久

Written by hisashi toshima 戸嶋 久

loves music, coffee, food, cats, football. iPhone, iPads & MacBook Pro user. Miles Davis enthusiast listening to some others.

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