直言癖
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小学生のころ「戸嶋くんは、おかしいと思ったこと、間違っていると思ったことを、その相手にそのまま直接ストレートに言ってしまうが、内容がいかに正しくてもそれでは嫌われるし、社会に出たらやっていけないぞ、気をつけたほうがいい」と担任教師に指摘されたことがあります。
といってもそれだって面と向かって注意されたわけじゃなく、なにかの折にぼくの父親(がずっとぼくの学校へは来ていた)が担任にそう告げられたのです。家に帰ってきた父づてにこれを聞かされたわけですよ、小学生のころ。
この直言癖が、結局のところその後半世紀以上が経過した59歳の現在もぜんぜんなおっていない、まったく同じままであるということなんですね。幼少時に身についた人間性、考えかたの根っこは死ぬまで変わらないとよく言いますが、まさにねえ、三つ子の魂百まで。
だいたいのひとは、家庭や学校や職場など社会的な人間関係の維持を重視して、ちょっと、いや、かなり妙だなと感じてもぐっとこらえて、直には言わないんじゃないですか。周囲のことを感じてみると、どうもそうなさっているんだという気がします。ぼくはそれが我慢しきれず出てしまう人間なんでしょう。
実生活では、嫌いでもそんなシンプルに関係を断ち切れないケースも多々ありますが、ネットですとですね、赤の他人、SNSなんかなら、ボタンを一回ポチっとするだけですからね、なのでみなさんわりと気軽にブロックなどなさっているようにみえます。もちろん直言癖人間であるぼくはブロックされまくる側ですけど。
それまでは密接なやりとりを交わすどんなに親しい関係であったとしても、そこはたんなるSNSフレンド、一瞬でわりとカンタンに交流を遮断されてしまうというわけで、現実生活がつらかったり、しんどい人間関係をかかえていたりすれば、うん、大なり小なりみんなそうなので、楽しみでやるだけのSNSでまで苦い直言をされたくないということなのでしょうねえ。
そう、ぼくは相手との関係性がどうであろうと、直接はっきり言ってしまう人間なんです。壊れようと困らない関係の相手にはむしろ言わないこともありますが(どうでもいいから)、壊れたら自分が悲しいだろうと思うような関係の相手にこそ、おかしいと思ったことをズバズバ直言してしまいます。
もちろんなにがおかしいとか間違っているだとかいうのはぼく個人の判断にすぎないので、こっちが狂っているばあいも多いはず。だから指摘する自分のほうが間違っていたりとかも。でもときにはあきらかに大勢が違和感を持っているだろうとわかっているケースもあります。
たとえばついこないだゴールデン・ウィーク前にFacebookでぼくをブロックなさったかたは、個人的にFacebookでそれまでいちばん仲が良く親密で、しかも強く信頼していたかたで、お会いしていっしょにお食事してお茶を飲んだこともあるんですが、昨年初春のコロナ禍突入以後しばらく経って、すっかりひとが変わったようになってしまいました。
「コロナはウソ、ただの風邪」「マスクはするな、顔にダニ菌が繁殖する」「ワクチンは毒、人口削減を目的に開発されたもの」〜〜 このような種類のいわゆる陰謀論的言説を、しかも自分では書かずこういった説をくりひろげている投稿を賛意でシェアしまくるようになったんです。
それがあまりにも頻繁すぎるから、ずっとお付き合いで読んでいたぼくもさすがにウゲェ〜と感じ、二日前のあるシェアをきっかけにはっきり言っちゃったんですね。どんな投稿をしようと、どんなシェアをくりひろげようとも、個人の自由でしょうから文句は言えませんけど、せめてもうちょっとだけ回数を減らしていただけませんか、と。
本音を言うともうかなりウンザリしていたので、言わずにそのまま黙ってアンフレンドすればよかったのかもしれなかったですね。ミック・ジャガー(ローリング・ストーンズ)も言うように、アンチ・ワクチンの陰謀論者とは話ができない、議論にならないのだから言うだけムダであるということで。そのかたも信じ込んでいてまったく真偽を疑っていないご様子でした。
しかしちょろっと話してみたらどうも激昂されたようで、次の瞬間にブロックされてしまいました。こういったこともですね、それまであんなに親密だったし信頼もして仲のいいお友だちだったのだから、その関係維持を第一に考えればなにも言わないで我慢しておく、どんなに頻繁でも見て見ぬふりをしておく、という選択肢があったかもしれませんが、ぼくはそれができない人間なのです。
同じ日の夜、Twitterでも、こっちはわさみんこと岩佐美咲関連で、あるファンのかたとモメました。わさみんは歌手なんだから歌を聴きたいと思うのは当然じゃないのかという意味のことを言いましたら、えらくキツい口調で反論が返ってきて、しばらく経ってブロックされました。この件はそれまでの伏線があったことだったと思いますが、長い話になるので省略します。
いずれにせよ、コロナ禍以後わさみんも思うように活動できないせいで、本人がいちばんつらいはずと思いますが、ぼくらファンも相当なストレスを一年以上にわたりためこんできていることは事実です。それが背景にあって、なおかつ、リアル・イベントが開催できないならネット配信で歌唱ライヴなどをもっと届けるべきだとどんどん発信していたぼくのことを、もともと「文句ばかり言うやつ」と受け取ってあまりこころよく感じていなかったのでしょう。
ぼくとしては、ファンである歌手が歌わないことがいちばんのストレスですし、歌手に歌を要求していくことはなんら間違っていないことだと信じておりますし、実際同じ意見のわさみんファンがほかにもたくさんいることを知っています。だけど、そう考えないファンもなかにはいるんだということでしょうね。うざいクレーマーだと解釈されてしまったみたいです。
プロ歌手として活動しているわさみん(の運営にだけど)に歌ってほしいと言うことはなんら間違ったことではなかったと、いまでももちろんぼくは信じています。でも、「わさみんの歌をそうやすやすと聴けると思うなよ」みたいな発言をTwitterのおおやけの場所でしてしまうかたに、ちょっとそれはどうかと思います、歌手の歌を聴きたいと思うのはあたりまえでしょう、と面と向かって直言する必要はなかったかもしれないですね。
コロナ前の2019年には首都圏エリアでのわさみんイベントでなんどもお会いして親しくおしゃべりしたり、金銭を託したりすることもあったフレンドさんだったのですが、そういった友人関係の維持を第一に考えるなら、直言するのを控えたほうがよかったのかも。言えば関係がギクシャクしたり壊れたりするかもしれなかったのですから。
しかし、そうとわかっていてもやめられないから「なおらない癖」なんですよね。
人間だれしも、加齢と経験を重ねるにつれ成長し変わっていく部分と、一生変わらない部分とがあるんでしょう。
(written 2021.4.29)