民謡クルセイダーズに降参

hisashi toshima 戸嶋 久
4 min readMay 6, 2020

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民謡クルセイダーズ / エコーズ・オブ・ジャパン

民謡クルセイダーズ。アルバム『エコーズ・オブ・ジャパン』がリリースされた2017年当時、一部でたいへんに評判が悪く、それですっかり聴いてみる気すらなくしていたようなところがありました。昨2019年あたりからかな世界での活躍を主に Twitter でさかんに見るようになり、いささか気になりはじめて、それでたぶんはじめてちゃんとアルバムを聴いてみたんですね。

そうしたら『エコーズ・オブ・ジャパン』、とってもいいじゃないですか。すっかり気に入ってヘヴィ・ローテイションしています。1曲目の「串本節」から快調で、このノリ、グルーヴがいいですよね。民謡ということで歌手の資質が問われるわけですけど、男声リード・ヴォーカルのフレディ塚本はホンモノでしょう。そのままノリよく4曲目の「真室川音頭」まで飛ばします。途中、女性歌手の Meg も歌っています。「真室川音頭」のこの熱狂的なグルーヴはアルバム前半のハイライトですよね。

民謡クルセイダーズのサウンドのキモは、パーカッション陣と、それからホーンズのリフかなと思いますが(田中克海の弾くエレキ・ギターかもしれないけど)、たとえば1曲目の「串本節」でも4曲目の「真室川音頭」でもそれが痛快にわかります。ラテン・リズムをベースとしながらも、ジャズやファンクの要素もふんだんにとりいれています。にぎやかで楽しいし、「真室川音頭」のこのグルーヴなんか、抵抗できませんよね。フレディ塚本の喉も聴かせます。リズムやホーンズなどのアレンジはだれがやっているんでしょう?合いの手のヴォーカルもいいですね。

民謡ですから歌詞の世界観がいかにも古色蒼然たるものなのはしかたがないです。日本語だから聴いてわかっちゃうのが難点ですけれども、なるべく無視して聴き込まないようにしています。それよりもこのリズムの躍動感やアンサンブルのカラーリングの多彩さ、主役ヴォーカリストの声の艶などに主に耳を傾けているんですね。間奏に入る楽器ソロ(主にギターかホーン)もなかなか聴かせる内容でグッド。

Meg が歌う明るい調子の5「安木節」を経て(リズムのゆるいこれは全体のなかではチェンジアップかも)、アルバム中盤の6「秋田荷方節」7「といちん節」の低くたなびくダークで不穏な感じもいいです。ちょっぴり『暴動』のスライ&ザ・ファミリー・ストーンを思わせたりもしますね。その後はアッパーな8「炭坑節」9「会津磐梯山」で激しく大きく盛り上がります。ここがこのアルバムのクライマックスに違いありません。

「炭坑節」は(ティト・プエンテの、というより)サンタナの「オイェ・コモ・バ」と合体しているし、「会津磐梯山」はデューク・エリントンの「キャラヴァン」と融合しながら3・2クラーベを大胆活用しています。いずれも激しいラテンなダンス・グルーヴをうまく表現できているし、民謡だって元来からこういったダンス・ミュージックだったわけですから、そんなエッセンス(本質)をうまく煮詰めて抽出・拡大できているんじゃないかと思いますね。

最後の「相撲甚句」はフレディ塚本の無伴奏独唱で極上の喉を聴かせてくれますが、とにかくなにはともあれにぎやかに楽しくやろう、踊ろうっていうエンターテイメント精神が横溢しているバンド&アルバムで、痛快なグルーヴに満ちていて、好感度は高いですね。

(written 2020.3.22)

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hisashi toshima 戸嶋 久
hisashi toshima 戸嶋 久

Written by hisashi toshima 戸嶋 久

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