奇跡の名曲「あたらしいともだち」〜 Soggy Cheerios (2)
Soggy Cheerios の二作目『EELS AND PEANUTS』(2015)1曲目の「あたらしいともだち」は奇跡の名曲でしょう。たぶんこのデュオ(鈴木惣一朗&直枝政広)がいままでにやったもののなかでは、最新作『III』をふくめても、最高傑作曲が「あたらしいともだち」じゃないですか。その最新作にしてからがアルバム・ラストにボーナス・トラックとしてこの曲のライヴ・ヴァージョンを収録しているんだから、本人たちだって同様に考えているかも。
個人的には『III』ではじめてソギー・チェリオスを知ったわけなので、「あたらしいともだち」もそれに収録のかもめ児童合唱団ヴァージョンでまず聴きました。その後、一作目『1959』(2013)、二作目『EELS AND PEANUTS』も聴いてみて、やはりこの曲が群を抜いた傑作、名曲であると確信するようになりました。でもきっかけがあって、それは YouTube で観たこの曲の MV ↓
モノカラーのこの映像、基本的に二人のスタジオ・セッションの様子をコラージュしていますけど、そこにこの曲の歌詞がパッ、パッと字幕で出るでしょう、ひとことひとことかみしめるように、ソギー・チェリオス側からそれを届けたいというようなそんな歌詞の出しかたですよね。親密な感じもうまく演出されているし、「さみしい時には、思い出してね、いつもどこかで、きみを気にしてる、ともだちがいること」っていうこの暖かみのあるリリックで、ぼくはちょっと泣いちゃいました。
歌のメロディもとても人間味あふれるやさしくあったかい感じだし、美しく、アレンジもサウンドもいい(やはり鈴木の弾くマンドリンが効果的)。歌詞もなにもかもひっくるめて、この「あたらしいともだち」という曲の傑出したハートウォーミングさがじんわり聴き手に伝わってきます。そんな MV ですっかりノックアウトされ惚れちゃってからは、CD や配信で聴いても同じように感動するようになりました。
ところでこの MV で一点気になることがあります。リール・テープがまわっているシーンがあるでしょう。えっ、ソギー・チェリオスはアナログ・レコーディングなの?と思ったんですけど、別のカットでは Mac コンピューターも一瞬映りますよね。CD ブックレット記載のクレジットによれば、この曲ではプログラミングは使っていません。ほかの曲で Mac を使ったってことですかねえ。う〜ん、どうなんだろう?
ともあれ「あたらしいともだち」みたいな傑出した名曲がアルバム・オープナーだから『EELS AND PEANUTS』のファースト・インプレッションがとてもいいわけです。そして聴き進んでいくと、実際かなりいい曲がたくさん並んでいますよね。5「うつくしいとしること」、7「道」、8「ふやけたシリアル」、9「次の季節のための歌」、11「サウンド・オヴ・サイレンス」などは本当にすばらしい曲だと思います。やはり曲のトータル・プロデュースがいいですよね、昨日も書きましたが。
いい曲がたくさん並んでいる、粒ぞろいである、という意味では、このセカンド・アルバムのほうが『III』より上かもしれないですね。個人的には出会いの感動が大きかったから『III』にどうしても軍配をあげちゃうんですけど。ビートルズ的シックスティーズ・ポップ〜セヴンティーズのアメリカン・ロックとか、そのあたりにあるだろうこの二名の音楽的ルーツは、『EELS AND PEANTUS』のほうが素直に表出されているかなと感じます。
ふわりとあったかい人肌のぬくもりを感じるソング・ライティングとサウンド・プロデュースが、三作とおしてぼくの思うソギー・チェリオス最大の魅力で、手づくり感というかヒューマンなてざわりがあるのがこのポップ・ユニットの特長ですね。鈴木の弾くマンドリンがやはり効果的に響く点もあわせ、こういったことが二作目『EELS AND PEANUTS』でもフルに発揮されています。
(written 2020.2.4)