基本のモルナ 〜 マリアーナ・ラモス
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Mariana Ramos / Morna
bunboniさんに教わりました。
マリアーナ・ラモス(カーボ・ヴェルデ)の2019年作『モルナ』。bunboniさんは今年三月にブログでとりあげていますけど、それで知ったにしてはぼくが書くのは遅くなってしまいました。これには理由があって、after youでディーノ・ディサンティアーゴの次だったんですよ。だからbunboniさんも分が悪いかもとお書きでしたが、まさしくそう。アルバム全編なんでもないようなモルナ一本だから、そのときは聴いてもフ〜ンって思っただけでした。
もう一つの理由に、ジャケット・デザインふくめ夏向きの音楽だなと感じていたということがあります。一、二度聴いてフ〜ンと感じただけのぼくでも、真夏の猛暑下であらためて聴きなおし、うん、なかなかいいアルバムじゃないかと考えなおしたんですよね。そういうわけで夏が終わりかけのいまごろ九月にようやく書いています。だから、ブログに上がるのは秋。
それでですね、スーパーマーケットなどの食品コーナーで売っているカゴメの商品に「基本のトマトソース」っていうのがあるんですけど、そのままでも使えるし、それをベースにして工夫を足せばまた違ったおいしい味わいになるっていう、まさに基本、土台、ベースなんですね。
マリアーナ・ラモスのこの新作って、このテイで言えば「基本のモルナ」だなって思うんですね。保守的でなんでもないものなんですけど、基本。モルナはカーボ・ヴェルデの国民音楽とまで言われる歌謡スタイルで、踊るためというよりしっとり歌って聴かせるものですね。カーボ・ヴェルデが島国であることからいえば、モルナは島唄みたいなもんですか。
モルナにアフリカ音楽っぽいリズムの躍動感みたいなものを求めると期待が外れますけど、これはじっくり聴くための音楽ですからね。同じ旧ポルトガル圏だったということで、ブラジル音楽からの影響もあるんじゃないでしょうか(モジーニャ)。
コラデイラとかフナナーとかバトゥーケとか、カーボ・ヴェルデにはあるわけですけど、モルナは歌謡として基本中の基本であるのかもしれないですね。マリアーナのアルバム『モルナ』は、そんなカーボ・ヴェルデ音楽の王道に真正面から向き合ってしっかり歌った充実作ということになるんでしょう。
島の浜辺にたたずみながら、海のさざなみの音を背景に、こんな歌を聴けたら気分最高だろうなあっていうような、そんなしっとりした歌唱の数々で満たされているマリアーナの『モルナ』。正直言って、アルバムの全48分間ずーっと同じ調子が続いて変化がないもんですから、たぶんそれもあって最初に聴いたときはピンと来なかったのかもしれません。やわらかくて自然体の歌唱ですしね。でも気分と雰囲気次第で、特に夏の夕暮れときとか、ちょうどいいんじゃないですか。正対して聴き込むっていうより背景におくといい感じになる音楽でしょう。
(written 2020.9.7)