伝統色とモダン・ポップスの融合 〜 ロジダ
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Rojda / Siyam
エル・スールのHPで、あるときトップ10内に載っていたので見つけた歌手、ロジダ(Rojda)。トルコのクルド人歌手だそうです。その2018年作『Siyam』がちょっと聴かせる内容ですよね。エル・スールでは人気ないのか、売り切れないまま下のほうに消えちゃいました。2020年最新作もSpotifyで聴けますけど、18年作のほうが好みです。
トルコの音楽はいままでもちょっとだけ聴いてきたつもりですが、クルド人の音楽となると100%無知でして、だからロジダのこのアルバムもなんとなくジャケットの雰囲気に惹かれて聴いてみただけだから、なにも中身のあることは言えないと思います。
アルバム『Siyam』、哀感をこめてしっとり聴かせるようなバラード調の歌がメインかなと思いますが、なかにはちょっと強めのビートの効いたダンス・トラックも数曲あったりして、そういうのだと聴きやすいなと感じます。ダンス・トラックでもメロディを形成する音階が悲哀感のあるものですけど、ビートが効いていれば楽しいですよね。
そのビートは主にコンピューターでつくったデジタル・サウンド。生のパーカッションかなと思える音も混じっていますけどね。あとやっぱりギターとか鍵盤楽器、管楽器とかは生の演奏者がいるはず。ロジダ本人はスムースに軽く歌いこなしていて、そんなにリキんでいないのは好印象です。曲にはトルコ・ポップスでいうアラベスクっぽい雰囲気もありますね。
ロジダのほかの作品もあたってみると、このひとはどっちかというと伝統楽器を中心に使って民謡系の歌をしっとりこなすというのが本領の歌手みたいで、『Siyam』みたいにデジタル・ビートをメインに据えたダンス・トラックもけっこうあるというのは異色みたいです。
『Siyam』だと、しっとり系の歌でもバックのサウンドにやわらかいコンピューター・サウンドが漂っているし、そういうプロデュース意図があったんでしょうね。ふだんの伝統色よりも現代的なポップス・サウンド中心に作品をつくりあげようとしたのがわかります。それでもけっこうハルクっぽいというか、しっとり哀調のバラードっぽいのもかなりありますけれども。伝統色とモダン・ポップスの折衷音楽と言っていいでしょうか。
コンピューター・サウンドがそうともわからない感じで、人工的なデジタルくささがほぼまったくせず、アクースティック楽器とまったく違和感なく溶け合っている、というのはいまや全世界の音楽であたりまえになっています。ぼくなんか旧世代人間だから、そういう時代になったんだなあと実感しますね。
(written 2020.12.25)