ロックにおけるラテン・シンコペイション(4)〜 スパイダース篇

hisashi toshima 戸嶋 久
3 min readMay 11, 2020

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レイ・チャールズ「ワッド・アイ・セイ」、ビートルズ「アイ・フィール・ファイン」の話をしたら、やっぱりザ・スパイダース(日本)の「バン・バン・バン」のことを言わなくちゃいけませんよねえ。いやあ、もうカッコイイのなんのって本当に。ラテン・ブルーズであるスパイダースの曲「バン・バン・バン」は、シングル盤「いつまでもどこまでも」の B 面として1967年10月25日に発売されたものです。

1967年にこんなのがあったわけですから、当時すでに日本にはしっかりした日本語ロックがあったことの証左ですけど、このスパイダースの「バン・バン・バン」、直接的には英マンチェスターのビート・バンド、ザ・マインドベンダーズの1965年「ラヴ・イズ・グッド」にインスパイアされてできあがったものらしいです。

これを聴くと、「バン・バン・バン」でかまやつひろし(井上孝之かも)が弾くギター・リフはそのまんまですよね。でもこういったロック界におけるラテン・リズムの活用は、たぶんぼくのみるところだいたいがレイ・チャールズの1959年「ワッド・アイ・セイ」から持ってきているものだと思うんですね。

マインドベンダーズのばあい、さらに「ラヴ・イズ・グッド」の前年にビートルズの「アイ・フィール・ファイン」のレコードが出ていたわけですから、参考にしなかったとは考えにくいです。

つまり、レイ「ワッド・アイ・セイ」(1959)→ビートルズ「アイ・フィール・ファイン」(64)→マインドベンダーズ「ラヴ・イズ・グッド」(65)→スパイダース「バン・バン・バン」(67)と、こういったおおざっぱな見取り図というか流れを描くことができると思うんですね。その上、「バン・バン・バン」には、ビートルズ「アイ・フィール・ファイン」からの直接流入もかなりあると思えます。

特に毎コーラス終わりで「バンバン・ババババ・ババババン」とハモリでコーラスを入れてふくらませるところなんかにも、ビートルズの影響を感じますよね。しかしレイのにもビートルズのにもマインドベンダーズのもない、スパイダースならではの特色は、リズムのこのがちゃがちゃしたにぎやかな色彩感です。グループのリーダーでドラムスの田邊昭知がかなりすごいラテン・リズムを演奏をしていますが、その他のメンバーもパーカッション類を担当しているんだなとわかります。あるいは多重録音かもしれません。

こんなにぎやかなでカラフルでラテンなリズム表現があるので、スパイダースの「バン・バン・バン」はまるで祝祭のような派手さ。聴いていて心が浮き立って、本当に楽しくいい気分です。堺正章のリード・ヴォーカルも色気があってカッコイイ。1967年の時点で、日本のこのロック・ナンバーは史上最高の突き抜け感を示していたんだと言えますね。それに一役も二役も買ったのが(UK ビート由来の)ラテン・シンコペイションだったということです。

(written 2020.3.31)

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Written by hisashi toshima 戸嶋 久

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