マイルズのベスト 9(ver. 2020)
以前こんな記事を書きました:「僕のオススメ〜マイルズの必聴アルバム10選」。
2017年3月の文章ですね。それ以後マイルズ・デイヴィスへの興味や関心が変化したり発展したりしている部分がありますので、2020年4月時点でのぼくが考える「マイルズのベスト・アルバム」というものを書いておくことにします。ただし変更点が二つ。10作ではなく9作にしました。ひとえに上掲のように画像をタイルしたかったから。
もう一つ、2017年に書いたときはいちおうマイルズ初心者に向けての配慮や、どのアルバムが重要かみたいな意義、全体のバランスも考えたんですけど、今回は個人的嗜好だけで選ぶことにします。音楽趣味でなにがいちばん肝心かって、その音楽を自分が心から好きかということですからね。2017年ベストと重なりすぎないようにとも思いましたが、一部はしかたがないです。
以下、タイトルの次のカッコ内にあるのはリリース年。そのリリース年順に並べましたが、でも一個だけ、『リラクシン』はプレスティジのアルバムなのでこの順番です。すべて楽に CD が買えるしサブスクリプション・サービスで聴けます。
いずれのアルバムもいままでにこのブログでとりあげてそこそこくわしく書いてきていますので、お時間があれば探してみてください。今日はそれぞれ手短に記しておくことにします。
・Miles Davis and Milt Jackson Quintet/Sextet (1956)
これはヒドゥン・ジェム。いままであまりマイルズを聴いてこなかったみなさんや、あるいはマイルズ・ファン向けにでも、強く推したい一枚です。推薦盤にあがることのないアルバムですけど、マイルズは歴史を変えたとかなんとかそんな立ち位置とはまったく無関係の、音楽の純粋な楽しさ、美しさがここにはあります。
・Relaxin’ (1958)
やはりなんといっても大好きなので。アルバム題どおりくつろげる内容で、ジャズを聴いてまったりタイムを過ごすにはもってこいの一枚ですよね。緊張感の張りつめた時間もありますし(「オレオ」)、「ユア・マイ・エヴリシング」といった絶品バラードでの玉に露な味わいや、「アイ・クッド・ライト・ア・ブック」や「イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー」の余裕もすばらしいです。
・Miles Ahead (1957)
これなんか、いままであまりにも聴きすぎていてさすがにもういいやって感じだろうと思ったら、今回また聴けば、特にバラード「カディスの乙女」「マイ・シップ」なんかの美しさにはやっぱり惚れぼれしちゃいますね。ぼくの考える最高のイージー・リスニング。A面が完璧。
・Someday My Prince Will Come (1961)
ウィントン・ケリー&ジミー・コブ時代がわりと好きなんですけど(『カインド・オヴ・ブルー』だって実はそうです)、このバンドはライヴで本領を発揮したのかもしれません。ほぼ唯一のスタジオ録音作であるこれは、しかしなかなか小粋でチャーミング、こじんまりとまとまっていて聴きやすく、キュートですよね。これもおだやかなくつろぎということが本質の音楽です。
・Miles Smiles (1967)
ぼくにとっては「オービッツ」「フットプリンツ」「フリーダム・ジャズ・ダンス」「ジンジャーブレッド・ボーイ」の四曲でのポリリズミックなアプローチがすべて。この1965〜68年のセカンド・クインテットの諸作中いまではいちばん好きなアルバムになりました。トニー・ウィリアムズって本当に天才でしたよね。
・Filles de Kilimanjaro (1968)
ここ一年半ほどは、これがある意味マイルズの最高傑作、とは言いすぎにしても、はっきりと時代を刻んだターニングポイントだったとみるようになっています。ジェイムズ・ブラウンやジミ・ヘンドリクスを下敷きにした「フルロン・ブルン」「マドモワゼル・メイブリー」には興奮しますね。「キリマンジャロの娘」のアフリカ志向といい、もう一度しっかり聴いて考えてみたいソウル/ロック・アルバムです。
・Jack Johnson (1971)
シンプルな演奏ですけど、ここで聴けるジョン・マクラフリンのロック・ギター(とマイクル・ヘンダスンのファンク・ベース)にはマジしびれます。ボスのオープン・ホーンもそれにふわりと乗ったり鋭角に切り込んだりして、スリリング。最初のインサートがあるまでの11分間弱は本当に宝石です。
・Black Beauty (1973)
1970年のフィルモア・ライヴにはいいものが多いんですが、『ブラック・ビューティ』になったウェスト4月10日公演がいまはいちばん好き。フェンダー・ローズにエフェクターをかませてナスティ&ダーティに弾きまくるチック・コリアにムズムズします。
・Live Around The World (1996)
フォーリー(g)+リッキー・ウェルマン(dms)体制が1981年復帰後のベスト・バンドだったというのがぼくの見解で、だから1988〜91年。そんな時代のベスト・ライヴ集であるこのアルバムはヒット曲ばかり収録していてベスト盤的な聴きかたができますし、バラード吹奏では死ぬまで輝いていたこのトランペッターの真価がわかる愛聴盤。しかもこのライヴ・アルバムには独特の雰囲気というかヴァイブがあるんですよね。
(written 2020.4.17)