トルコ伝統色も濃いモダン・ポップス 〜 マラル
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Maral / Gülüm
トルコの歌手、マラル(Maral)の2020年作『Gülüm』。ジャケットから判断するとモダン・ポップスをやっているのかなという印象ですが、中身を聴くと伝統色もけっこう濃いですね。ハルクやアラベスクなどトルコ伝統歌謡をベースにしたモダン・ポップスといった趣きでしょうか。
全体的に哀感が強く、そのへんはいかにもターキッシュ・ポップスだなといった印象ですが、なかには強いビートの効いた曲もあります。たとえば2曲目がそう。これもじゃあ現代的なポップスなのかというと伝統色も濃厚に感じられたりもして、そのあたりの塩梅といいますか、加減がなかなか絶妙ですね。
ぼくがこのアルバムを見つけて聴いてみて、うんなかなかいいんじゃない、ちょっと文章にしておこうかなと思ったのも、そういったモダン・ポップスのなかに伝統がしっかり活きているといった音楽のありようが気に入ったからで、あわせて歌手の声の美しさと、この二つですかね。
楽器もコンピューターを使った打ち込みビートとサウンドをメインとしながらも、生演奏の楽器だってかなり混ぜ込まれていて、だれがサウンド・メイクというかプロデュースをやったのか知りませんが、なかなか腕前のいい人物なんだろうなと推測できます。哀感を込めてゆったりとただようような曲調のものでは、楽器使いもアクースティックな伝統色が強いですかね。ビートの効いたポップス調だと打ち込み系メインで。
歌手マラルの声にも特徴があって、美声なんですけど、憂いを帯びたこの独特の声質がなかなかチャーミング。大きな、しかし派手すぎない軽いコブシをしっかりとまわし、強いハリのある発声で伸びやかに歌うさまには、堂々とした風格みたいなものすら感じますね。どれくらいのキャリアの持ち主かわかりませんが、余裕のあるヴォーカルです。
情報によればCDだと写真集のようなフル・カラーのブックレットが付属しているらしく、マラルはヴィジュアル面でもアピールできうるモデルのようなポジションのひとなんでしょうか。
(written 2021.1.5)